「どうぞ、奥へ・・・」
若い男性の低く押し殺した声に促され
俺はスイートルームのリビングへ向かう
そこには恰幅の良いバスローブ姿の男性が
煙草をゆっくりと燻らせながらソファーに腰かけていた
「どうも、はじめまして。」
「ええ、こんばんは」
しかし、実のところ彼とは「はじめまして」ではなかった
数年前にも一度逢っていたのだが、、、
その時には「とっても懲りた」イメージが残っている
「少しお二人をお待たせしてしまい申し訳ありませんでした」
「いえいえ(笑)」
既にその時、俺は室内に残る
微かな体臭とくぐもった空気を感じ取っていた
「お飲物など用意しておりますので、ゆっくりとなさってください」
「では、お言葉に甘えて・・・」
俺達がグラスを手に取るとすぐに
室内に居た二人の女性がビールをなみなみと注いでくれる
「じゃあ、乾杯!」
彼のかけ声に
俺は素知らぬ顔のまま微笑むとグラスを高く掲げた

しばらくは何気ない歓談が進んでいたが
そろそろ彼が頃合いと見たのか
「Rさんは緊縛をなされるようですが、、、」
「ええ、しかし非常に拙いレベルでお恥ずかしいくらいです」
「この二人ならどちらが縛り甲斐がありそうでしょうか?」
「そうですね・・・」
そこには極めて対比的な魅力の女性が二人。
その豊満なバストはきっとGカップは超えているであろう
ハーフのような顔立ちのセクシーな女性
黒髪で小柄な体型の
切れ長の目をした和風の顔立ちのボーイッシュな女性
「お二人とも、すごく魅力的です」
「ええ。」
俺は彼の期待しているであろう答えが
すぐにわかってしまったのだが
敢えてそこは自分の感覚そのままで応じる
「貴女は恥ずかしいことがきっと苦手では?」
俺は黒髪の和風美人に目を向け質問を投げかけた
「ええ、、、」
彼女は、少しはにかむように頷く
「おい、Rさんに早速縛ってもらいなさい」
彼はすかさず顎をしゃくって和風美人の彼女を促した
「はぃ、、、」
「Rさん、ではお願いします」
「わかりました。では隣室をお借りします」
俺は傍らの彼女に
「すぐに戻るから、のんびりと待っておくようにね」
そういうと立ち上がり
薄暗く窓を打つ雨音だけが微かに響く部屋へと向かった
つづく